頭皮湿疹は頭部にできる湿疹の総称で、かゆみ・赤み・フケなどの症状をもたらします。放置すると悪化する恐れがあるため、皮膚科を受診したり、市販薬を使うなど適切なケアが必要です。この記事では、皮膚湿疹の原因別の治療法を解説するとともに、ヘアケアや生活習慣の見直しなどの予防法についても紹介します。市販薬の選び方や使い方も説明しますので、頭皮湿疹が気になる方はぜひご覧ください。
頭皮湿疹の主な4つの原因と治療法
「毎日洗っているのに頭がかゆい」「シャンプーや整髪料がしみる」「フケが多い」などの頭皮トラブルが気になったら、それは頭皮湿疹かもしれません。
頭皮湿疹とは頭皮に発生する炎症の総称で、何らかの原因で頭皮にトラブルが起きると発生します。代表的な症状はかゆみ・赤み・かさつき・ベタつき・フケなどで、主な原因には次の4種類の疾患が挙げられます。
それぞれの疾患の原因や対策について見ていきましょう。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは、頭皮や顔、胸などの皮脂の分泌が多い部位に発生する疾患です。頭皮に発生すると、頭皮の赤みやフケ・かさぶたなどを生じます。
原因
脂漏性皮膚炎の原因ははっきりとはわかっていませんが、次の3つが関係していると考えられています。
体質や遺伝的要因で皮脂の分泌が多い
ストレスや睡眠不足によるホルモンバランスの乱れ
糖質や脂肪分の多い食事や食物繊維やビタミンB2・B6の不足など生活習慣の乱れ
上記の要因などにより皮脂が過剰に分泌されると、脂漏性皮膚炎を引き起こしやすくなります。
また、最近では皮膚の常在菌であるマラセチアというカビ（真菌）の一種が関与していることも明らかになってきました。マラセチアは皮脂を栄養にしているため、皮脂が増えるとマラセチアも増殖します。マラセチアが皮脂を分解すると遊離脂肪酸という炎症物質が発生し、皮膚に刺激が加わって脂漏性皮膚炎の原因となるといわれています。
治療法
脂漏性皮膚炎の治療は、主にステロイド外用剤を用いて炎症を抑えます。症状によっては、抗真菌外用剤を併用したり、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤などの内服薬を使用する場合もあります。
また、薬による治療だけでなく、適切な洗髪により頭皮を清潔に保つことも大切です。
接触皮膚炎
接触皮膚炎とは、原因物質が皮膚に触れることでおこる「かぶれ」のことをいいます。主な症状は赤みやかゆみ、ブツブツなどで、原因物質が触れた部分にだけ出るのが特徴です。
原因
接触皮膚炎には、原因物質の刺激によって誰にでも現れる「刺激性接触皮膚炎」と、アレルギー物質が原因でアレルギー体質の方に現れる「アレルギー性接触皮膚炎」があります。
刺激性接触皮膚炎の原因で多いのはシャンプーやヘアケア、ヘアカラーなどで、これらに含まれる化学物質等が刺激となって炎症が起こります。一方、アレルギー性接触皮膚炎は、シャンプーやヘアケア、ヘアカラーなどの成分のほか、ヘアピンなどの金属が原因となるケースもあります。
治療法
接触性皮膚炎の原因がはっきりしている場合は、使用を中止して炎症を起こさないことが大切です。赤みやかゆみなどの皮膚症状は、ステロイド外用剤を用いて治療します。かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬などの飲み薬が処方される場合もあります。
アトピー性皮膚炎
アトピー皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が繰り返し現れる疾患です。頭皮に生じる主な症状はかゆみや赤み・ブツブツなどで、左右対象に出る傾向にあります。
原因
アトピー性皮膚炎の原因は完全には解明されていませんが、肌のバリア機能が低下して外部から刺激物質が入ることで炎症が起きるとされています。ストレスや食べ物、ダニやハウスダストといった複数の要因が重なって悪化することが多いため、日常生活にも注意が必要です。
また、発症には遺伝や体質が大きく関わっているといわれています。実際に、アトピー性皮膚炎を発症した方の多くは、「アトピー素因」というアレルギー疾患の既往歴や家族歴を持っていることが明らかになっています。
治療法
アトピー性皮膚炎が原因の頭皮湿疹は、皮膚科専門医による診断と治療が必要です。治療には、基本的にステロイド外用剤が用いられます。
皮脂欠乏性皮膚炎
皮脂欠乏性皮膚炎は、皮脂の分泌量が少ないことが原因の皮膚炎です。乾燥により肌のバリア機能が低下してかゆみを感じるようになり、かゆさで肌をかき続けることで炎症が起こります。
原因
皮脂欠乏性皮膚炎は、「生まれつき皮脂の分泌が少ない」「シャンプーの洗浄力が強すぎる」「生活が不規則」などが原因で起こります。また、空気が乾燥する秋から冬にかけては症状が悪化しやすい傾向にあります。
治療法
皮脂欠乏性皮膚炎の主な原因は乾燥のため、皮膚科では保湿剤が処方されます。また、乾燥が進んで強いかゆみやブツブツが出ている場合は、ステロイド外用薬で炎症を抑える治療をおこないます。
頭皮湿疹を予防する4つの方法
頭皮湿疹は頭皮環境の悪化によって発症するケースが多いため、予防や改善にはヘアケアや生活習慣の見直しが欠かせません。ここでは、頭皮湿疹を予防するための4つの方法を紹介します。
①頭皮に合ったシャンプーを使う
頭皮の状態は人それぞれ異なるうえ、季節によっても変わります。このため、シャンプーは頭皮の状態に合わせて選ぶことが大切です。
例えば、頭皮が乾燥しているときに洗浄力の強いシャンプーを使用すると、必要以上に皮脂を洗い流してしまい乾燥の悪化につながります。洗浄力が穏やかなシャンプーを選び、優しく洗いましょう。
逆に、皮脂が多いのに洗浄力の弱いシャンプーを使用すると、汚れが落ちきれず刺激の原因となります。適度な洗浄力のシャンプーを選び、しっかり皮脂汚れを落としましょう。
②洗い方を見直す
シャンプー選びだけでなく、洗い方も重要です。強くこすりすぎると頭皮を傷つけたり、お湯が熱すぎると必要な皮脂まで洗い流してしまうため、次の手順でシャンプーしましょう。
①髪と頭皮を予洗いする
ぬるめのお湯で髪と頭皮を十分に濡らし、頭皮の汚れを浮かせるよう指の腹でやさしくマッサージします。
②シャンプーとお湯をよくなじませて泡立てる
シャンプーの原液は洗浄力が強すぎるため、そのまま髪や頭皮につけずにしっかり泡立ててから使います。
③頭皮と髪にシャンプーをつけて洗う
指の腹を気持ちよい程度の力加減で小刻みに動かし、泡を頭皮全体に行き渡らせるように洗います。
④洗浄成分が残らないようしっかりすすぐ
すすぎ残しは頭皮への刺激になるため、ぬるめのお湯で丁寧にすすぎます。特に耳の裏や前髪の生え際、首筋などはすすぎ残しが起きやすいため注意しましょう。
③髪の乾かし方を見直す
頭皮環境を整えるうえで意外と見落としがちなのが、髪の乾かし方です。濡れたままの長時間の放置や自然乾燥は、菌が繁殖する原因になるため避けましょう。
乾かし残しがないよう髪の根元や頭皮から乾かすのがポイントで、熱ダメージを抑えるためにドライヤーは30cm程度離して使います。また、事前にしっかりタオルドライすることでドライヤーの使用時間を短縮できます。
④健康的な生活習慣を維持する
過度なストレスや不規則な食生活、睡眠不足などはホルモンバランスを乱し、皮脂の分泌が過剰になるなど頭皮トラブルの原因になることも。運動や趣味などでリフレッシュしたり、バランスの良い食事や十分な睡眠など健康的な生活習慣を心がけましょう。
市販薬の使い方
頭皮湿疹のうち接触性皮膚炎や皮脂欠乏性皮膚炎は、市販のステロイド外用剤でのセルフケアが可能です。市販薬の選び方や使い方を見ていきましょう。
ステロイド外用剤の選び方
ステロイド外用剤は強さによって5段階に分類され、このうち「ストロング」「ミディアム」「ウィーク」の下位の3段階のみが市販薬として販売されています。市販のステロイド外用剤を購入する際は、中学生以上は「ストロング」、子どもは「マイルド」、赤ちゃんは「ウィーク」と、年齢に応じた強さのものを選びましょう。
また、ステロイド外用剤には軟膏・クリーム・ローションなど複数の種類があり、塗り心地などの好みに合わせて選べます。髪の毛で軟膏やクリームが塗りにくい部位には、ローションタイプを選ぶとよいでしょう。
なお、頭皮湿疹の原因がわからないときや症状が強いとき、症状の範囲が広いときは、自己判断でステロイド外用剤を使用せず、医療機関に受診しましょう。
ステロイド外用剤の使用方法
ステロイド外用剤は、症状が出たら年齢に合ったランクのステロイドを早めに使い、短期間でしっかり炎症を抑えることが大切です。かゆみや赤みなどの炎症が出ている部位にのみ塗布し、症状のない部分への使用や予防で塗るのは避けましょう。
ステロイド外用剤による治療をおこなうと、軽度の接触性皮膚炎や皮脂欠乏性皮膚炎であれば数日程度で良くなるのが一般的です。5～6日程度使用しても治らない場合や症状が悪化した場合は、使用を中止して医療機関を受診しましょう。
頭皮湿疹はAGAと併発している場合がある
頭皮湿疹とともに抜け毛が気になる場合は、AGAを併発している可能性があります。
特に脂漏性皮膚炎による頭皮湿疹は、AGAと併発する場合も少なくありません。AGAは男性型脱毛症とも呼ばれ、発症には男性ホルモンが大きく関わります。男性ホルモンには皮脂の分泌を促す性質もあり、過剰な分泌は脂漏性皮膚炎につながりやすくなります。
頭皮湿疹もAGAも放置すると悪化する恐れがあります。症状が気になるときは医療機関に相談してみましょう。
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まとめ
頭皮湿疹には複数の原因があり、それぞれ治療方法が異なります。症状が軽いうちは原因を取り除いたり市販の外用剤の使用で治る場合も多いですが、症状が強いときや原因がわからないときは早めに皮膚科を受診しましょう。
また、頭皮湿疹を防ぐためには正しいヘアケアや健康的な生活習慣が有効です。頭皮の乾燥やベタつきが気になる方や頭皮湿疹になりやすい方は、頭皮や髪の洗い方を見直したり、十分な睡眠を心がけるなど、日常生活から見直してみましょう。
